【編集方針】

 
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2015年9月20日日曜日

経団連「死の商人化」計画 その2


【メディア草紙】1976 2015年9月20日(日)
■経団連「死の商人化」計画 その2■


▼経団連がいつから「死の商人」化したのかをさかのぼる話。今から35年前の1980年4月9日付朝日新聞に、次のような記事が載っている。1980年といえば、昭和55年か。昭和は遠くなりにけりだなあ。


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〈「武器輸出論」を批判 経団連会長「別の方法もある」〉

〈経済団体連合会の土光敏夫会長は八日の記者会見で、財界の一部で最近出てきた「武器輸出論」に批判的な態度を示すとともに、米国とイランの断交に対しては、事態収拾のため「中近東に対してクリーン・ハンドである日本ができることをやるべきだ」との考えを示した。

土光会長は会見で、永野重雄・日本商工会議所会頭がこのほど、原油をはじめとした資源の確保もからめて武器禁輸の緩和を検討してもよいのではないか、との考えを示したことに対し「個人的意見」としたうえで「産油国に武器を売って油を取ることも一つの方法かも知れないが、別の方法もある。それは選択の問題だが、何も武器を売らないと油が入ってこないとか、輸出入の不均衡がどうにもならないとは思わない。自動車の輸出で批判を受けているのだから、武器を輸出したらどうなるだろうか」と述べた。(中略)

財界で防衛論議が盛んになってきたことについては「財界人だけでなく、みんなが意見を出したうえで決めるのが民主主義だ」と主張した。〉
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▼武器輸出反対を、はっきりと選択していたわけだ。次に、1981年1月15日付。


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〈火中のクリを拾うな 経団連会長 武器輸出緩和に慎重論〉

〈稲山嘉寛経済団体連合会会長は十四日、東京・有楽町の日本外国特派員協会の昼食会で「日本経済の展望と課題」と題して初めて講演したが、講演後の質疑応答の中で武器輸出問題について「戦争の危険のない国には輸出してもいいといっても、その国が将来にわたって戦争をしないかどうかはわからない。結果的に戦争に巻きこまれることもある。火中のクリはあまり拾わない方が日本にとっては賢明」と武器輸出の緩和には慎重な姿勢を示した。〉
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▼厄介なものに手を突っ込むな、火傷するぞ、という意見。それでも立派だ。土光、稲山両氏とも、じつに真っ当な識見だ。というか当たり前すぎる話だと思うのだが、そう思うほうが狂っている世の中になってしまった。

ここで、前号で紹介した、お金という宗教を信じた成れの果てである経団連の最新の動向を確かめておこう。

〈経団連は15日の幹事会で、武器など防衛装備品の輸出を「国家戦略として推進すべきだ」とする提言を了承し、正式決定した。(中略)安倍政権は昨年4月、武器輸出三原則を撤廃し、武器の輸出や共同開発を本格化させた。しかし、提言では長期的な具体策が不明確だとし、「防衛関連事業から撤退する企業が出ている」と危機感を強調した。〉朝日9月16日付

土光、稲山発言と読み比べてみよう。1980年代の日本人が2015年にタイムスリップしたら、目を剥くこと請け合いである。平成の世では、すでに「武器輸出三原則」も否定され、「死の商人として金儲けするのは前提」になっている。

どこから変わり始めたのだろう。とても既視感が強いんだが、やっぱりアメリカからの「報告書」っぽい。1984年9月15日付朝日。


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〈米報告書が日本の武器禁輸緩和を予測 防衛庁説明〉

〈十四日開かれた経団連防衛生産委員会(委員長 守屋学治三菱重工業相談役)で、防衛庁の山田勝久装備局長が、米国国防総省の諮問機関である防衛技術審議会国際産業協力部会(議長カリー元国防次官)の報告書について説明した。

この報告書は、昨年十一月の日米相互防衛援助協定に基づく交換公文で、わが国から米国への武器技術供与の道が開かれたことに伴い、日米間の武器技術協力問題について幅広く調査、分析したもの。報告書は、わが国の防衛関連技術を高く評価し、エレクトロニクス用セラミックなど十六項目に関心を示す一方、

今後防衛関連輸出の制限緩和を求める圧力が新たに生まれ、武器輸出三原則がなしくずし的にゆるめられて最終的には非殺傷防衛機器の第三国への輸出が認められる、と予測している。

(中略)日本の武器禁輸政策(米国向け技術移転を除く)は今後とも続くが、「何らかの変更が行われることは明らか」とし、今後十年から二十年の間に、米国へのハードウエアも含め技術移転の拡大、日米の防衛システムの共同開発と生産、第三国への汎用技術、機器の輸出増、非殺傷防衛機器の特定の第三国への輸出などが「禁輸三原則の枠組みの域を脱しないと解釈されて」実施されると予測している。〉
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▼マジで予言書の域に達している。しかし、この報告書から30年経って、さらに進んだわけだ。具体的に、結果的に、死の商人化が進んだきっかけは、1990年代の「TMD」(戦域ミサイル防衛)だったっぽい。長いのでつづく。


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