【編集方針】

 
「本が焼かれたら、灰を集めて内容を読みとらねばならない」(ジョージ・スタイナー「人間をまもる読書」)
 
「重要なのは、価値への反応と、価値を創造する能力と、価値を擁護する情熱とである。冷笑的傍観主義はよくて時間の浪費であり、悪ければ、個人と文明の双方に対して命取りともなりかねない危険な病気である」(ノーマン・カズンズ『ある編集者のオデッセイ』早川書房)
 

2014年1月1日水曜日

相対化する力/2014年1月1日

▼2014年の元日の新聞で、興味深かったのは、琉球新報の「辺野古移設に関する米専門家の声」だ。2010年から2013年にかけて、「辺野古移設、マズイっしょ」とか「必要ねえんじゃね?」的な12人+2文書のコメント、考察、批判を一覧表にした記事だ。

カート・キャンベル、ランド研究所、上院軍事委員長、ジョセフ・ナイ、ジェラルド・カーティス、アーミテージなどなど。豪華な面々である。

こういう事実の列挙を目にすると、これまで本土のマスメディアは、いったい何を報道してきたのだろう、と首を傾げてしまう。

▼この日の琉球新報1面トップは、1968年から69年まで、嘉手納基地の弾薬庫内で枯れ葉剤が定期的に散布されていた、という元アメリカ兵証言である(島袋良太記者)。その弾薬庫の近くには軍用犬の訓練場があり、1968-73年の軍用犬の腫瘍発生率は、ベトナムの倍だったそうだ。新年号にふさわしい内容だ。

記事には地図がついていて、その弾薬庫地区や元軍用犬訓練場のすぐそばを、比謝川(ひじゃがわ)が流れ、西が読谷村、南が嘉手納町。陸上競技場や「道の駅かでな」も、すぐ近くにある。

▼ほかにも、東京新聞1面トップの「東京電力が免税国オランダを活用して税金を逃れ、海外に210億円蓄財している」という報道や(桐山純平記者。この記事は、東日本大震災の被災者が仮設住宅で一人暮らししている写真と組み合わせたレイアウト)、

朝日新聞の「第一次世界大戦」考(近藤慶太郎記者/ドイツとフランスの共同教科書=剣持久木コメント、山田慶兒『海路としての尖閣諸島』紹介)に、ニッポン社会を覆いつつある空気を【相対化する力】を感じる。

安倍総理の靖国神社参拝を重ねて批判した、アメリカ国務省の「『失望』の意味は明確」というコメントを紹介した記事(東京新聞)も然り。

▼こういった報道は、いわば「1日だけのベストセラー」であり、すぐに忘れられてしまう。そもそも、県紙の良質な報道は広く流通しない。そして、良質な報道を「ほめる文化」が、ニッポン社会には乏しいと感じるわけさ。だから、いい報道は、ドシドシほめようと思う。

▼物事を「時をおいてながめる」には、ふだん使わない努力を要する。それは「反射」とは異質の力だ。コーヒーやジンジャーエールを飲みながら、うんうんと唸る力だ。

論理だけでもない、感情だけでもない、生活の底に根ざした言論こそが、客観報道の呪縛を破る力になるのではないだろうか。