【編集方針】

 
「本が焼かれたら、灰を集めて内容を読みとらねばならない」(ジョージ・スタイナー「人間をまもる読書」)
 
「重要なのは、価値への反応と、価値を創造する能力と、価値を擁護する情熱とである。冷笑的傍観主義はよくて時間の浪費であり、悪ければ、個人と文明の双方に対して命取りともなりかねない危険な病気である」(ノーマン・カズンズ『ある編集者のオデッセイ』早川書房)
 

2015年2月9日月曜日

『国家と秘密』を読む〜実害編その3

 
 
【PUBLICITY 1964】2015年2月9日(月)
■『国家と秘密』〜実害編その3
freespeech21@yahoo.co.jp

▼実害編の最終回です。今号は

・制度設計をめぐる官僚の無能
・沖縄密約の顛末
・戦後外交文書の公開からわかること

の三本柱。

▼『国家と秘密』(集英社新書)には、「維新の党」が〈官僚の思うつぼにはまった〉(168頁)事例が挙げられている。

特定秘密保護法について少し調べた人なら誰でも、「特定秘密の延長期間」について読んだ覚えがあるだろう。特定秘密が特定秘密である期間は「5年以内」だが、「30年」まで延長できる。さらに、閣議決定によって最大「60年」まで延長できるようになった。じつは暗号などはさらにさらに期間を延ばすことができる。どんだけ~

▼そもそもこの法律は【外務大臣や防衛大臣が特定秘密を扱えない】ようになっている。要するに官僚が暴走した時、誰も止められない(国会が機能しない)ところに最大の問題があるのだが、ま、そのうえで、「60年」について。

▼これは〈自民党と日本維新の会との修正協議で合意された部分〉であり、瀬畑源氏は〈維新の会はこれによって年数に歯止めをかけられたと考えたわけですが、私はこの報道を見た時、公文書管理制度を理解できていないから「良くなった」と勘違いしたのではないかと思いました〉(166頁)という。

なにをどう勘違いしたのか。これ、とってもややこしくて長い説明になっちゃうのだが、次の「カラクリ編」にもつながる話なので、興味のある人は読んでみてね。法律だけつくってもまるでダメだということがよくわかる。

「秘密保護法」の場合は、「公文書館」の存在を埋め込んだ「制度設計」を考えなければならなかった。具体的には「情報公開法」「公文書管理法」との関係を考えずに突っ走ったから、「特定秘密保護法」は弊害ありまくりの代物になってしまったわけだ。

大事なところは適宜【】。ぼくの感想は(※)。


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そもそも、各行政機関の長が「特定秘密」を指定し、かつ監視機関が強力でなければ、必然的に「期間を延ばせるだけ延ばす」という心理が働きます。すでに述べたように、【秘密を指定することは処分の対象になりませんが、解除すべきでないものを解除すれば処分の対象となる】でしょう。(※そりゃそうだ。だからわざわざリスクをとるはずがないね)

なお、「内閣の承認」が得られればとなっていますが、閣議で大臣たちがいちいち文書を精査してチェックすることは、時間的にも能力的にも不可能ですから、リストが提出されて、それを無条件で承認することになるのは目に見えているのです。

よって、むしろ【「六〇年まではOK」とばかりに秘密指定を延長するインセンティブが働く可能性が高い】です。さらに六〇年以上に設定できる情報も相当に範囲が広く、永久に指定し続ける可能性もありうるでしょう。年数に歯止めをかけるのなら、「原則最長三〇年+必要なもののみをさらに三〇年まで」とすれば、まだ話はわからなくはないのですが。

では、なぜこういう「勘違い」が起きるのか。それは、【「特定秘密解除」=「公開」と誤解されているから】ではないでしょうか。(※この一文が肝。以下、秘密保護法と公文書館とは本来どういう関係なのかを念頭に置いて読めばよくわかります)

第三章ですでに論じたように、【たとえ国立公文書館等に移管されたとしても、そこでさらに公開審査が行われるのであり、即公開ということにはなりません。】専門家によって公開してよいか否かの判断がなされるのです。

ですから、本来なら、特定秘密の指定を三〇年で原則解除して、国立公文書館等に移管をするのがあるべき姿なのです。もしくは、国立公文書館等の職員も適性検査を受けさせ、特定秘密のまま移管し、その解除は国立公文書館等の側に検討させるという仕組みがあってもよいのです。

【そうした仕組みが必要な理由は、各行政機関が公開・非公開を判断するのではなく、そこから切り離された機関が客観的に判断できるようにするためです。】また、各行政機関では古い文書は倉庫に山積みにされ、何が重要なのか分からなくなっていることが多く、紛失や誤廃棄などが起きやすいのです。

国立公文書館等では、文書がカビたりしないように、温湿度の管理などをしっかりと行っていますが、各行政機関ではそこまで保存方法をセンシティブに考えてはいないので、文書が劣化してしまって読めなくなる恐れがあります。

例えば、一九八〇年代~九〇年代にかけてワープロなどでよく使われた感熱紙は、扱いがずさんだと色が飛んでしまい、文章が読めなくなってしまうのです。

【本来ならば、専門的な知識を持つ国立公文書館等できちんと保存され、専門家の判断で公開・非公開を決めるような制度設計が必要なのです。】しかし、そういった発想がこの法律には欠けています。

国立公文書館等は独立行政法人であり、人員も少ないという「弱小」機関ですので、各行政機関は国立公文書館を信用していないと思われ、そのために「自分たちで特定秘密を抱え込む」という選択をしたがっているのです。それに維新の会は乗っかってしまったのです。国立公文書館の強化こそ先に必要なことだったのではないでしょうか。

『国家と秘密』166―168頁
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▼そうそう、信じられないことに、国立公文書館って独立行政法人になっちゃったんだよね。さらに弱まってしまった。ニッポンの官僚たちがどれほど「近代」の意味を理解していないかがわかる事例だ。法治国家における官僚の存在理由は、そして国民にご奉公した証しは、「公文書」しかないのにさ。

『国家と秘密 隠される公文書』の帯に載っていた写真。敗戦直後の通達だ。
よく見ないとわからないのだが、「本文書ハ焼却(しょうきゃく)相成度(あいなりたく)」と
書いてある。つまり「焼け」という命令。象徴的な一言だ。



実害編は、あと二つ挙げておしまい。「おわりに」から。

一つは、有名な沖縄密約をめぐる最高裁判決。


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この裁判は、沖縄返還をめぐる密約文書の開示を求め、元毎日新聞記者の西山太吉さんや作家の澤地久枝さんなど二三人が二〇〇九年に国を訴えていたものです。二〇一四年七月一四日の最高裁判決は、密約文書が存在したこと自体については、二審の東京高裁判決を支持し、認めざるをえませんでした。(※ま、当たり前だよね)

しかし、「すでに文書は廃棄された」という国側の主張を認め、「開示せよ」との訴えについては退けています。【情報公開の請求者に対し文書の存在を証明する責任まで求めた今回の判決は、情報公開法と公文書管理法の基本理念に反しており、行政が自分の都合で情報を隠すことを認める特定秘密保護法の論理に立つものです。】

184―185頁
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▼沖縄密約はほんとにひどい。元検事総長の松尾邦弘氏は以下のように語っている。――が記者、「」が松尾氏。

〈――(※西山さんの)有罪が確定して20年余り後の2006年、吉野さん(※吉野文六元外務省アメリカ局長)は「密約」の存在を認めました。

「当時、私は検事総長でした。危ない事件になった、と感じました。吉野さんが真相を語ったことで、検察の起訴判断時の土台は崩れてしまった。結果として、【『密約』という嘘を暴いた西山さんの有罪は確定したまま、嘘をついた方はお咎(とが)めなしという事実だけが残った】のです」

(中略)「(※当時)どういう形で申し合わせがあったかわかりませんが、【政権中枢や外務省関係者は明白に虚偽の証言をした。検察の調べに対しても、上から下まで虚偽の供述を重ねていたのです。国家権力は、場合によっては、国民はもちろん、司法に対しても積極的に嘘を言う。そういうことが端無(はしな)くも歴史上、証明されたのが密約事件です。】

【歴史の中で、あそこまで露骨に事実を虚偽で塗り固めて押し通したものはありません。】国家の秘密をめぐっては、こういうことがあるんだ、と検察官、裁判官も、事実として認識すべきです」(朝日新聞2014年12月10日付)〉

検事総長に「嘘をついた」って言われたら怖いよネ。

▼続いて最後の一つ。


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また、戦後外交文書の二〇一四年七月二四日の公開で、一九六一(昭和三六)年一一月の核兵器使用禁止を求める国連決議に日本政府が賛成投票したのは、国内世論に対する配慮からであったこと、一九六四年の中国の核実験に関していえば、警戒を強めていた米政府とは異なり、日本政府は極めて楽観的な見通しで臨んでいたこと、などが、初めて明らかになりました。

このような国の安全保障に関する重要な情報も、今回の特定秘密保護法の下では、半永久的に秘密に付される公算が高くなります。安全保障に関する情報といえども、「特定秘密」という例外扱いにせず、あくまで情報公開法と公文書管理法の枠組みの下に置いておくことの大切さが、改めて示されたといえるでしょう。

185―186頁
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▼次は「カラクリ」編と題して、さらに『国家と秘密』を読み込んでいきたい。


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