【編集方針】

 
「本が焼かれたら、灰を集めて内容を読みとらねばならない」(ジョージ・スタイナー「人間をまもる読書」)
 
「重要なのは、価値への反応と、価値を創造する能力と、価値を擁護する情熱とである。冷笑的傍観主義はよくて時間の浪費であり、悪ければ、個人と文明の双方に対して命取りともなりかねない危険な病気である」(ノーマン・カズンズ『ある編集者のオデッセイ』早川書房)
 

2015年2月8日日曜日

追悼 後藤健二さん・湯川遥菜さん


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目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。
それは祈りに近い。憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。
-そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった。

後藤健二 @kenjigotoip
2010年9月7日 22:49
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【PUBLICITY 1963】2015年2月8日(日)
■追悼 後藤健二さん・湯川遥菜さん■

▼後藤健二さんも、湯川遥菜さんに続いて殺されてしまった。その事実がわかったのは先週の日曜早朝だった。ぼくはタラル・アサドの『自爆テロ』(青土社)を読みながら机で寝てしまい、午前4時ごろ布団にもぐった。朝、テレビをつけるとだいたい後藤さん殺害のニュース一色だった。

同じ日曜の早朝に、追悼の文章を発信したい。


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「後藤さん殺害」映像、「イスラム国」が公開
首相「テロ許さない」

朝日新聞デジタル 2015年2月2日05時00分

過激派組織「イスラム国」は1日早朝、フリージャーナリスト後藤健二さん(47)=東京都港区=を殺害したとする映像をインターネット上に公開した。日本政府は、後藤さんの可能性が高いと判断している。会社経営者湯川遥菜(はるな)さん(42)=千葉市=を殺害したとする画像もすでに公開されており、日本人2人が拘束された人質事件は最悪の事態となった。安倍晋三首相は同日、記者団に「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わせるために、国際社会と連携していく」と語った。

1日早朝に公開された新たな映像では、後藤さんとみられる男性がひざまずかされ、横にナイフを持った黒ずくめの男が立つ。男は英語で「安倍(首相)よ。このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる」などと話し、男性の首にナイフをつきつける場面の後、遺体とみられる静止画が映し出される。「イスラム国」の宣伝を担うラジオ局も、後藤さんを殺害したと明らかにした。(中略)

「イスラム国」は1月20日、2人を人質とする映像を公開した。当初は72時間以内に身代金2億ドル(約236億円)を払わなければ殺害すると警告。24日には、湯川さんとみられる遺体の写真を持つ後藤さんの映像を公開し、後藤さんを解放する条件として、ヨルダン政府が収監する死刑囚の釈放を要求していた。

さらに29日には、後藤さんと死刑囚を交換する用意ができなければ、「イスラム国」が拘束するヨルダン軍パイロットを殺害するとのメッセージを公開。パイロットの安否は明らかになっていない。(星野典久、アンマン=渡辺丘)

■映像で流されたメッセージ(原文英語)

日本政府よ。邪悪な有志連合を構成する愚かな同盟諸国のように、お前たちはまだ、我々がアラーの加護により、権威と力を持ったカリフ国家であることを理解していない。軍すべてがお前たちの血に飢えている。

安倍(首相)よ、勝ち目のない戦争に参加するという無謀な決断によって、このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる。日本にとっての悪夢を始めよう。
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▼さらに2日後、次のニュースが報じられた。


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ヨルダン軍パイロット殺害か 「イスラム国」が映像公開
アンマン=渡辺丘、渡辺淳基
朝日新聞 2015年2月4日04時57分

過激派組織「イスラム国」が3日、昨年12月に拘束したヨルダン軍パイロット、ムアーズ・カサースベ中尉を殺害したとする画像をネット上で公開した。ヨルダン軍は同日、国営テレビを通じて「画像は本物」としたうえで、「懲罰と報復を誓う」との声明を出した。

映像では、中尉が屋外に設置されたおりの中で、火をかけられた。国営テレビは「カサースベ中尉が殺害されたのは1月3日」と伝えた。

カサースベ中尉は米軍主導の対「イスラム国」軍事行動に参加して昨年12月24日、ヨルダン空軍のF16戦闘機でシリア領空を飛行中に「イスラム国」側によるとみられるミサイル攻撃を受けて墜落。「イスラム国」に身柄を拘束された。

ヨルダン政府は当初、2005年に起きたテロ事件の実行犯として死刑判決を受けたサジダ・リシャウィ死刑囚との交換を模索していたとみられる。

だが、「イスラム国」は今年1月20日、フリージャーナリストの後藤健二さん(47)と会社経営者の湯川遥菜さん(42)の拘束を公表。のちに後藤さんとリシャウィ死刑囚の交換を求め、できない場合は中尉を殺害するとしていた。ヨルダン政府は繰り返し、中尉の生存を証明するよう「イスラム国」側に求めたが、反応はないままだった。

1月3日に殺害されたのが事実とすれば、日本政府やヨルダン政府が対応を急いでいたとき、すでに中尉は死亡していたことになる。訪米中のアブドラ国王は日程を切り上げ、帰国するという。

また、衛星テレビ局アルアラビアなどによると、ヨルダン当局は4日にも、リシャウィ死刑囚を処刑するという。(アンマン=渡辺丘、渡辺淳基)
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▼殺されたのは1月8日だという説もあるが、
どちらでも結論は一緒だ。「イスラーム国」は端(はな)から「交渉」する意思など1ミリも持っていなかったことがよくわかる。

「イスラーム国」関連のニュースについて、本誌の4896人の読者の皆さんに考えてほしいことがある。「イスラーム国」の目的は「恐怖を与える」ことだ。だからぼくは、今後「彼らの編集した映像」は見ない/見せないでほしいと思う。メディア関係で働いている人には、「彼らの映像を想起させる映像」もなるべく報道しないでほしいと望む。

上に引用したような新聞記事などの文字情報を読めば、彼らの主張の内容はわかる。ナチス・ドイツにも比すべき相手の土俵に、わざわざこちらから乗る必要はない。深掘りすべき点は、他にいくらでもある。ぼくはそう思う。

ただし、「イスラーム国」と戦う、ということと、「イスラーム国」が生まれた原因を考える、ということとは別の話だ。だから本誌では、「イスラーム国」が生まれた大きな原因の一つが欧米の傲慢にあることも、書く必要があれば書くだろう。「イスラーム国」の存在に、いわゆる「先進国」は責任がない、などという知的態度のもとから生まれる議論が、これから「イスラーム国」に渡るかもしれない人の心まで届く言葉になるとは、とても思えないからだ。

このテーマについて書く時、本誌では少なくとも三つのことを念頭に置いておきたい。

一つは、いまニッポンに住んでいるムスリムへの暴力やヘイトスピーチを止めること(すでに複数の事件が報道されている)。

二つは、「イスラーム国」へのニッポン人の流入を止めること(これもすでに複数の例が報道されている)。

三つは、マスメディアとのつきあい方を吟味する。これは従来どおり。いっそう重要になることは言わずもがなだろう。

この三つの観点で、共有すべき情報があったら教えてください。


▼後藤健二さんは何故(なぜ)、危険を承知でシリアへ向かったのか。その一点が解(げ)せなかったのだが、「クリスチャントゥデイ」というサイトの記事を読んで納得した。


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イスラム国邦人殺害予告:教会で2人の無事祈る
牧師「平和求める願いは皆同じ」
2015年1月22日19時42分 記者:竹村恭一

イスラム教過激派組織「イスラム国」に拘束されている邦人2人のうちの1人、国際ジャーナリストの後藤健二さんが所属する日本基督教団田園調布教会(東京都大田区)では21日、定例の祈祷会が行われ、拘束されている後藤さんと湯川遥菜(はるな)さんのために祈りがささげられた。
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▼同サイトは昨年9月、後藤さんにインタビューしていた。彼は1990年代の初めにプロテスタントのキリスト教徒になったという。だから冒頭に引用したツイートのなかにある「アラブの兄弟」は、「同じ神を信じる兄弟」という意味だ。以下、インタビューを抜粋。


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すでに、国際ジャーナリストとして駆け出していた彼は、常に「死」と隣り合わせにいた。そのことを不安や恐怖に思わなかったわけではない。紛争地に出向くときは、ほとんど一人で飛行機に乗り、現地で通訳やドライバーなどとチームを組む。しかし、日本から一人で危険地帯に出向き、そこで死を迎えるようなことがあれば・・・。

「もし、取材先で命を落とすようなことがあったとき、誰にも看取られないで死ぬのは寂しいかなとも思いました。天国で父なる主イエス様が迎えてくださるのであれば、寂しくないかな・・・なんて、少々後ろ向きな考えで受洗を決意したのは事実です」と後藤さん。

しかし、当時の牧師に「われわれの信じる神様は、われわれが死ぬときのためにいらっしゃるのではないのですよ」と咎められ、はっとした。それからは、毎日生きていることに感謝し、神様に守られ、今も生きていることに感謝しているという。(中略)

最後に後藤氏は、小さな聖書を差し出してくれた。いつも取材に出かけるときに手放さず持っている聖書だという。十数年前に同教会の牧師から頂いたものだと言い、大切そうにページをめくっていた。そこには、

「神は私を助けてくださる」(詩篇54:6)

という言葉が。「この言葉を、いつも心に刻み込んで、私は仕事をしています。多くの悲惨な現場、命の危険をも脅かす現場もありますが、必ず、どんな方法かはわかりませんが、神様は私を助けてくださるのだと思います」
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▼もう一つ、後藤さんの人間性に触れた記事を紹介しておきたい。日経1面のコラムだ。


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春秋2015/1/25付

「きょうはプレゼントを持ってきました」。差し出されたのはイスラム教徒が祈りのときに用いる数珠だった。場所は東京拘置所の面会室。海賊行為を働き日本で有罪判決を受けたソマリア人の男が向こう側に、こちら側には後藤健二さんがいた。2年前の2月である。

▼当時、はるか遠く、アフリカの東の海であった犯罪を日本で裁くにいたる経緯が話題になったのを記憶する。ソマリアは公用語のソマリ語と日本語との通訳さえ見つからない遠い国だ。その裁判に、後藤さんは自ら現地を取材して集めた資料を証拠として供し、孤独のなかで心を病んだソマリア人を拘置所に見舞っていた。

▼もちろん、海賊行為の悪質さ、野蛮さを憎んでいただろう。一方で、犯罪を生む国の貧困、混乱を理解し、なにより異国の獄中にあるイスラム教徒の心のうちを想像する力があった。
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▼この後藤さんと同じプロテスタントのキリスト教徒である佐藤優氏のコメント、特にその前半が心に沁(し)みた。


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佐藤優氏のコメント 産経新聞 2015.2.3 23:02

後藤健二さんはプロテスタント系のクリスチャンだった。新約聖書には、羊飼いが99匹の羊を残してでも迷える1匹の羊を探しに行く話が紹介されている。

湯川遥菜さんの行動に関してはさまざまな批判があった。でも誰も助けないのはいいのか、それは冷たすぎるのではないか。後藤さんはクリスチャンとして、勝算が限りなくゼロに近くても試してみる価値はあると考えて、「イスラム国」に向かったのだろう。

最後に覚悟を決めた表情をしたのも自分なりの信仰、信念があったからだろう。それに彼は日本人として、最後に見苦しいまねはしなかった。イスラム国に向かう直前には、「何が起こっても、責任は私自身にあります」とメッセージを残した。後藤さんの行動には武士道的な考え方も感じられる。

かつてソ連共産党が結成したコミンテルンは世界中の共産党を支部と位置づけ、全世界で共産主義革命を起こそうとしていた。イスラム国も同じだ。日本にもドイツにも、フランスにもイスラム国の支持者がいる。それが緩やかなネットワークでつながり、それぞれの国内でテロを起こさせ、世界イスラム革命を起こすことが彼らの目的となっている。

日本とイスラム国との戦争はすでに始まっており、敵は日本国内にもいる。昨年にはイスラム国の戦闘員に加わろうとシリア渡航を企てたとして、北海道大学の男子学生らが家宅捜索を受けた。こうした法規違反に関し、日本政府は厳正に対処していくべきだ。

日本国民は勝つか、消し去られるかという戦争をしている。この戦争には勝たないといけない。今回の事件にひるむことなく、中東支援を続け、イスラム国の壊滅に向けた行動を続けていくべきだろう。(談)
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▼後藤さんは、ジャーナリズムの原理で動いたのではなかった。ましてや政治や資本主義の原理で動いたのではなかった。彼は一人の信仰者として命をかける道を選んだ。そして同時に、ジャーナリストとして致命的なミスを犯してしまったのだ。

これだけ常軌を逸した「自己責任論」がかまびすしい社会だから、言わずもがなのことを書くけど、後藤さんを誰が責められようか。

アメリカのオバマ大統領は1月31日、後藤さんについて〈「報道を通じて、勇気を持ってシリアの人々が置かれた苦境を外部の世界に伝えようと勇敢に取り組んだ」と称賛。ヘーゲル米国防長官も同日、「後藤さんは伝えられる必要があることを伝えるため、危険な場所に行った」と評価する声明を出した〉(朝日デジタル 2015年2月2日06時48分)

いっぽうわが国の政治家は、たとえばこんな感じだ。

〈自民党の高村正彦副総裁は4日、記者団に対し、過激派組織「イスラム国」がフリージャーナリスト後藤健二さんを殺害したとされる人質事件について「後藤さんが3度にわたる日本政府の警告にもかかわらずテロリスト支配地域に入ったことは、どんなに使命感があったとしても、蛮勇というべきものであった」と語った。朝日デジタル 2015年2月4日11時48分〉

なんという落差だろう。そして、下記は2日前のぼくのツイート。


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マジで?信じがたい。"@minorucchu: 故・後藤健二さんの母親・石堂順子さんがドイツ最有力誌の単独インタビューに応じた。ドイツ人記者は安倍内閣が現時点まで弔意を示す連絡を母親に入れていない事実に絶句した。 "
6:28 - 2015年2月6日
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ドイツの週刊誌「STERN(シュテルン)」の取材だったようだ。珍しく90以上もリツイートされた。

▼これから本格的な議論が始まる安保法制について、〈菅官房長官は、邦人人質事件に関し「安全保障法制の整備と今回の事案は別問題だ」と述べた〉(共同2015年02月01日)とのこと。しかし現実的に、別モノとして扱われることはないだろうナ。さっそく安倍総理はこの機に乗じて、憲法九条を変える時期を明言したからナ。

反知性主義の特徴は「機を見るに敏」か。

▼ちなみに後藤さんは去年の9月23日のラジオで「イスラーム国」についてのインタビューに答え、以下のようにコメントしている。20分30秒くらいから。

〈日本が「アメリカの空爆を支持する」と、安倍さん(安倍総理)が、例えばこれから国連でやる演説の中で、もうそこまで具体的に言ったりなんかしたら、もう日本も、同じ同盟国と見られて、いろんなところに旅行に今、日本人の方々行ってますけれども、テロとか、誘拐とか、そういうのに気をつけなくちゃいけない。それが一つのバロメーターになると思います〉

哀しいことに、このコメントどおりの悲劇が後藤さんの身に起きてしまった。また、このラジオを聞くと彼が「イスラーム国」の目的は金でも人でもなく「土地」であることを鋭く指摘していたこともわかる。


▼あと四つの声明を紹介したい。

まず、後藤さんの妻が公表した二つの声明。一つは「イスラーム国」から脅迫されて公表したものだ。


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後藤さん妻、解放求める音声メッセージ公開
ヨルダンで12歳まで過ごした妻の望みとは?
Reuters 2015年01月30日

私の名前はリンコです。シリアで捕らえられたジャーナリスト、後藤健二の妻です。彼は2014年10月25日、私の元からいなくなりました。それ以来、私は彼の解放のため、舞台裏で休むことなく働き続けてきました。

私は今まで声明を出すことを避けてきました。なぜならば、健二の苦境に対するメディアの注目が世界中で騒ぎ立てられています。私は自分の子供と家族をそこから守ろうと考えていました。私たち夫婦には、2人の幼い娘がいます。私たちの娘は健二が日本を離れた時には、わずか生後3週間でした。私は、2歳の上の娘が再び父親に会えることを望んでいます。2人の娘が父親のことを知りながら、成長していくことを望んでいます。

私の夫は善良で、正直な人間です。苦しむ人びとの困窮した様子を報じるためにシリアへ向かいました。健二は、湯川遥菜さんの居場所を探し出そうとしていたと推測できます。私は遥菜さんが亡くなったことに、非常に悲しい思いをしました。そして、彼の家族の悲しみを思いました。家族の皆さんがどれだけつらい思いをされているかがわかるからです。

12月2日、健二を拘束したグループからメールを受け取ったとき、健二がトラブルの中にあることを知りました。1月20日、私は湯川遥菜さんと健二の身代金として2億ドルを要求する動画を見ました。それ以来、私とグループとの間でメールを何回かやりとりしました。私は、彼の命を救おうと戦ったのです。

20時間ほど前に、誘拐犯は私に最新の、そして最後の要求と見られる文章を送ってきました。「リンコ、お前はこのメッセージを世界のメディアに対して公表し、広げなければならない。さもなければ、健二が次だ。29日木曜日の日没までに健治と交換するサジダがトルコ国境付近にいなければ、ヨルダン人パイロットを即座に殺すつもりだ」。

これは私の夫にとって最後のチャンスであり、彼の解放と、ムサス・カサスベさんの命を救うには、あと数時間しか残されていないことを心配しています。ヨルダン政府と日本政府の手中に、二人の運命が委ねられていることを考えて欲しいと思います。

同時に、私はヨルダン政府と日本政府のすべての努力に対して感謝しています。ヨルダンと日本の人々から寄せられる同情に対しても感謝しています。私が小さかったころ、私の家族はヨルダンに住んでいました。そのため私は12歳になるまで、(ヨルダンの首都である)アンマンの学校に通っていました。だから、私にはヨルダンとヨルダンの人々に対して、特別な感情を持っており、多くの思い出があります。

最後に、私は、私と娘たちを支えてくれた、私の家族、友人たち、そして健二の同僚に感謝しています。私の夫と、ヨルダン人パイロット、ムアス・カサスベさんの無事を祈っています。リンコ
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▼12歳になるまで、彼女はヨルダンで暮らしていたのだ。こんな偶然があるのだろうか。

そして、夫が殺されたあとのコメント。


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後藤健二さん妻がコメント
「大きな喪失」「夫を誇りに思っています」
クリスチャントゥデイ 2015年2月2日15時25分

イスラム教過激派組織「イスラム国」が後藤健二さんを殺害したとする映像を公開したことを受け、後藤さんの妻は1日、英国のフリージャーナリスト支援団体「ローリー・ペック・トラスト」のウェブサイトで、英文のコメントを発表した。


健二の死の知らせに、私の家族と私は打ちのめされています。彼は、単に私の愛する夫、また私たちの可愛い子どもたちの父親であっただけでなく、世界中の多くの人々にとって、息子であり、兄弟であり、また友でした。

個人的に大きな喪失を感じていますが、イラクやソマリア、シリアといった紛争地域にいる人々の苦悩を伝えてきた夫を大変誇りに思っています。一般の人々への(紛争による)影響に光を当て、とりわけ子どもたちの視点を通して、戦争の悲劇の外にいる私たちへ伝えることに情熱を注いできました。

この困難な数カ月間にわたって、私や私たちの家族を支えてきてくださった皆様に感謝します。

私たちの家族にとって非常に困難な時であることを想像してくださると思います。メディアの皆様には、私たちのプライバシーを尊重し、この喪失を受け入れる時間を私たちに与えてくださるようお願い致します。
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▼これらの文章を読んで、ぼくは涙をおさえられなかった。驚くべき自制心と隙のない知性、そして後藤さんへの愛情があふれている。

そして、親族名で出されたコメントと、殺害後の、後藤さんの母のコメント。


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日本政府及び各国政府並びに国民の皆様へ

この度は、後藤健二が世間をお騒がせすることとなり、大変申し訳ございません。

解放に向けご尽力いただきました日本政府及び各国政府、並び無事解放を願っていただきました国民の皆様に対しまして、親族一同心よりお礼申し上げます。さらに、この間ご支援を頂きました友人の皆様に心より感謝申し上げます。

10月末にシリア国境付近にて消息を絶って以来、私ども家族は無事の帰国を祈ってまいりましたが、このような結果となり痛恨の極みであり、悲しみに打ちひしがれております。

ジャーナリストという職業柄、危険な地域の取材に出かけることも多く、万一の場合の覚悟はしてきたつもりでおりましたが、大切な家族を失い、この喪失感を受け入れなければならない塗炭の苦しみの中にあります。

最後に、親族一同の願いとしましては、後藤健二の御霊の安らぎを願うとともに、幼い子供たちとともに心静かな生活を送って参りたいと思っておりますので、ご理解とご高配を賜れれば幸いです。

後藤健二 親族一同
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健二は旅立ってしまいました。あまりにも無念な死を前に、言葉が見つかりません。今はただ、悲しみで涙するのみです。しかし、その悲しみが「憎悪の連鎖」となってはならないと信じます。「戦争のない社会を作りたい」「戦争と貧困から子どもたちのいのちを救いたい」との健二の遺志を私たちが引き継いでいくことを切に願っています。
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▼これも、とくに親族コメントの冒頭を読んで胸が苦しくなり、泣けて仕方なかった。なぜ、謝らねばならないのか。「謝らなければ攻撃される」からだ。後藤さんの遺族にそう感じさせる圧力があるからだ。「自己責任」というひどい言葉に象徴される、この極めて内向きで攻撃的な国民性を変えなければならない。しかし島国根性の負の特徴は簡単には変わらないだろう。


▼後藤健二さんと湯川遥菜さんのご冥福を祈ります。


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2015年1月28日水曜日

ロレッタ・ナポリオーニ『イスラム国』

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結果がどうなるにせよ、外国の軍事介入が中東の不安定化の解決にならないことははっきりしている。これまでにも解決できなかったし、これからもできまい。

したがって、これ以上の犠牲や破壊を食い止めるためには、より現実的なアプローチが必要になる。その際には、この地域に新しいパワーが存在することをまず認識し、代理戦争は結局ブーメランのように我が身に跳ね返って来るだけであることを理解しなければならない。

この新しいパワーに対抗するには、戦争以外の手段を模索すべきである。

ロレッタ・ナポリオーニ
『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』
文藝春秋、168頁、村井章子訳
2015年1月10日 第1刷
原著
THE ISLAMIST PHOENIX
The Islamic State and the Redrawing of the Middle East
(2014)
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【PUBLICITY 1962】2015年1月28日(水)
■ロレッタ・ナポリオーニ『イスラム国』■
freespeech21@yahoo.co.jp

▼せっかくメールをいただいている方、ごめんなさいね。『国家と秘密』の紹介も一回飛ばして、今号はこの本を紹介する。

ロレッタ・ナポリオーニ『イスラム国』文藝春秋

編集者がドイツのブックフェアで見つけて素早く翻訳したというウワサを耳にした。イスラーム国に興味のある人(ということは2015年1月20日以降の日本人ほとんど全員)に強くオススメする。『国家と秘密』は2014年の年末に熟読すべき名著だったが、『イスラム国』は2015年の1月、たった今、熟読玩味すべき一冊だ。ぼくのツイッター @offnote_ をフォローしてくれている人はすでにご存知だろうが、ナポリオーニ氏はツイッターもやっている。 @l_napoleoni 真っ当な指摘が多いです。

▼イラク戦争の時、ぼくは本誌のアタマに「ニッポン、戦争中」等と掲げて何通も発信したが、2015年の今もニッポンは戦争中である。そう認識したほうが、誰が眠たいことを言っていて、誰が鋭いことを言っているのか、いろいろとわかりやすくなると思う。

安倍政権は今年、安保法制をどうこうしようとしているが、ニッポンの外で、安倍総理や官僚たちはただ翻弄されるしかない、はるかに大きな波がうねっているのではないだろうか。

▼「イスラーム国」による二邦人の人質事件について、最新ニュースを確かめておこう。

〈後藤さん不明、昨年11月に把握 首相、答弁で明かす
2015年1月27日20時59分 朝日新聞デジタル

過激派組織「イスラム国」に拘束されているフリージャーナリスト後藤健二さん(47)について、安倍晋三首相は27日の衆院本会議での代表質問に答え、「昨年11月に行方不明事案の発生を把握した直後に、官邸に(情報)連絡室、外務省に対策室を立ち上げ、ヨルダンに現地対策本部を立ち上げた」と述べた。「イスラム国」が後藤さんの拘束をインターネット上で告知する約2カ月前から、政府が対応に動いていたことが明らかになった。

政府は昨年8月16、17日に、「イスラム国」による会社経営者湯川遥菜(はるな)さん(42)の拘束事件のために情報連絡室などを設置した。菅義偉官房長官は27日の会見で、後藤さんの事件について、いずれも昨年11月1日付で、湯川さんの事件で設けた情報連絡室の対象に追加するなどしたと説明。後藤さんの行方不明を把握しながら水面下で対応していたことについて「事案の性質上、非公表とした」と説明した。

政府高官は27日、後藤さんを11月の時点で政府対応の対象とした理由について「(後藤さんが)音信不通で行方不明と判断した」と語った。ただ、その際には後藤さんが拘束されたとの情報は得られていなかったという。

首相は答弁で、昨年8月に拘束された湯川さんと、その後に現地入りしたとみられる後藤さんの消息を確認するため、「あらゆるルートを通じて情報収集や協力要請を行ってきた」と経緯を説明。「極めて厳しい状況だが、後藤さんの早期解放に向けて全力を尽くす」と語った。〉


〈湯川さん「殺害」のネット画像 政府、公開前に把握
2015年1月27日05時03分 朝日新聞デジタル

過激派組織「イスラム国」による人質事件で、日本政府は24日深夜にインターネット上に公開された拘束中のフリージャーナリスト後藤健二さん(47)の画像について、公開されるよりもかなり早い段階で把握し、音声の内容もつかんでいたことが政府関係者への取材でわかった。

政府はこれまで、24日午後11時過ぎにネット上に公開された画像を把握したとしていた。画像の後藤さんは手に写真を持っており、写真の中には千葉市出身の会社経営者湯川遥菜(はるな)さん(42)が殺害されたとみられる様子が写っていた。また画像には音声があり、後藤さんを名乗る男性の声で、「イスラム国」の要求が身代金からヨルダンで収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚の釈放に変わったことを告げていた。

政府関係者によると、政府は画像を分析し、信憑(しんぴょう)性が高いと判断。安倍晋三首相はこの画像の情報を踏まえ、24日午後5時半すぎ、ヨルダンのアブドラ国王との電話協議の際に、「イスラム国」の要求が女性死刑囚の釈放に変更されたことを国王に伝えたという。この電話協議について、日本政府は約20分間という協議時間と同席者の名前以外は一切公表していない。〉

ちなみに身代金の額は2億ドルだった。映像が公開されるはるか前から事件は進んでいたわけだ。

▼そのうえで、『イスラム国』から現時点で重要だと思った箇所を三つ引用したい。まず一つめが冒頭のくだり。本書の結論である。続きをもう少し。


「アラブの春」の失敗。「イスラム国」の成功。これ以外に、第三の道はありうるのだろうか。答はイエスだ。第三の道には、教育、知識、そして変化の速い政治環境に対する深い理解を必要とする。〉(170頁)

▼二つめは、アメリカとイギリスの国策について。ここ数日ですでに各種報道に触れて、ぼくたちは散々思い知ったわけだが、さらに突っ込んで分析されている。適宜【】をつけた。

人質解放のために交渉はしないというアメリカとイギリスの方針により、英米人は誘拐されたら斬首されることを知っている。ジハード戦士のチャットルームやツイッターのメッセージを見ると、「イスラム国」の同調者の間では、この方針は英米国民の恐怖心を煽る戦略だと考えられているらしい。「イスラム国」に対する恐怖がつのるほど、軍事介入に広く支持を得る政治環境が整うからだ。

ちょうど二〇〇三年のイラク侵攻のときと同じである。

ただし今回の目的は、【侵攻ではない】。中東における欧米の同盟国、とりわけサウジアラビアを始めとする湾岸諸国を、カリフ制国家の革命的なメッセージから【守ることにある】。放置しておいたら、カリフ制国家はほんとうにこれらの同盟国の内部で革命を引き起こしかねない。〉(128頁)

つまり、日本が追従している米英の国策は、イラク戦争時と変わっていないのだが、その意味が「攻め」から「守り」へ変わっているというのだ。

▼そして三つめ。【本質は宗教戦争ではなく、現実的な政治戦争だ】という指摘だ。()は引用者。

じつに理解しがたいことだが、欧米の大国は、中東で繰り広げられているのはあくまで宗教戦争であって、その発端は七世紀アラビアの宗教的確執にあると信じ込んだのである。しかし、似たような紛争がキリスト教徒の間で起きた場合、その原因を宗教に求めることはめったにない。まず必ず、政治的要因を探すはずだ。

(中略)今日、(イスラーム国などのスンニ派から)シーア派に対して行われる背教者宣告は、イラク、シリア、さらには他の地域で内戦状態を引き起こすことを目的とする。なるほど一見すると、宗教を理由とする戦いであって、政治的・経済的権益とは無縁であるように見えるかもしれない。しかし一五世紀のヨーロッパと同じく、真の動機は政治的・経済的なものであり、そのルーツはこの地域の権力抗争にある。

(中略)一言で言えば、シーア派の抹殺は、政治・経済の両面でカリフ制国家の運営を容易にすると同時に、スンニ派の間にわだかまる復讐心を満足させ、新しい国への忠誠をいっそう強めることになるのである。〉(151頁)

▼本書をよく読むと、イスラーム国がシーア派とスンニ派とを分断し、「ナショナリズム」を煽ることによって勢力を広げたことが納得できる(48頁、50頁)。

おそらく最も読者の表情をこわばらせるのはイスラエルとイスラム国との対比だろう。29頁、80頁、88頁に書いてある。

イスラーム国が拡大した原因については、国連安保理の機能不全(112頁、157頁)、代理戦争の仕組み(67頁~72頁)、宗教の悪用(118頁、126頁)などが細かく論じられている。

それぞれ細かく紹介したいが、数年前のようにたくさん書く余裕がないもんでネ。「読みたいけれど1458円がない」という人は近所の図書館で借りてください。


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2015年1月17日土曜日

『国家と秘密』を読む~実害編その2


マラーやデムーランの監督下では、咬みつきたがる獰猛な番犬だった新聞も、 
これはしたり! 嬉々として尾(しっぽ)を振りながら、 
彼の足もとにじゃれついてくるではないか。 
新聞だって鞭をくらうよりも、ビスケットを食うほうが好きなのだ。

ツワイク『ジョゼフ・フーシェ』岩波文庫、144頁、高橋禎二・秋山英夫訳



【PUBLICITY 1961】2015年1月17日(土)
■『国家と秘密』~実害編その2■
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▼『国家と秘密』(集英社新書)に列挙された「公文書隠しの実害」の歴史を続ける前に、毎日新聞の良記事を紹介しよう。大阪社会部の日下部聡記者が1月8日付で書いた記事。キーワードは

〈「どうなる」ではなく「どうする」〉

▼前号でぼくは、『国家と秘密』から

〈そもそも犯されるというに足るほどの知る権利を、戦後日本の国民は、持っていたのでしょうか?〉(13頁)

という強烈なライトモティーフ=Leitmotivを引用した。ただしもちろん、知る権利はわずかかもしれないが「ゼロ」ではないし、そのゼロではないものを広げる努力に価値はある。

〈(戦後日本の情報公開や司法のチェックが)十分に機能しているかどうかは議論の余地がある。しかし、戦前になかった多くの民主的な制度を私たちが手にしているのは事実だ。

日下部記者はこの「事実」を地道に示してきた優れた新聞記者の一人だ。〈情報公開法に基づき、私は特定秘密保護法案の検討過程の記録を開示請求した。段ボール箱約20個分もの文書が届いた。黒塗りもあったが、分かったことも多かった。▽内閣法制局が当初、必要性に疑問を呈していた▽原案を作った内閣情報調査室は、法が国民の基本的人権を侵害する危険性を認識していた――などと記事にした。〉

▼また、ある警察庁幹部からは、匿名ながら次のコメントを聞き出している。

「今は公開できない情報も、後世の人々には記録として残していく必要があると思うのですが」という質問に対し、

「それはそう思いますよ」「外国から情報を受け取るために、法が必要なのは確かです。しかし、実務上はこれまでも特に困ったことはない。個人的には、罰するのは公務員側だけにするとか、もう少し絞った法律でもよかったと思う」

▼もう一つ、特定秘密保護法に反対し、成立後は同法の運用基準をつくる諮問会議委員になった清水勉弁護士のコメントも印象深い。

〈反対派からは「取り込まれた」と非難する声も上がった。しかし、清水氏は言う。「『成立したら負け』ではないのです。できてしまった以上、少しでもまともな法律にするにはどうするかを考え続けなければならない」

まったくそのとおりだ。〈運用基準には清水氏の意見も一定程度反映された。諮問会議は今後も年1回、法の運用状況に意見を述べる。〉

記事の末尾は〈特定秘密だけに目を奪われることなく、あらゆる非公開情報に民主的なコントロールの仕組みを埋め込んでいかなければならない。情報管理の基礎となる公文書管理法の充実も重要だ。主権者である私たちは、「どうなる」ではなく「どうする」を考えたい。〉と結ばれている。完全に同意である。

新聞記者は自らすすんで権力の鞭をくらう必要はない。と同時に、すすんでビスケットを食らう必要もない。しかし、あちらでもこちらでもビスケットをくわえ始めた時、くわえないだけで同調圧力にさらされるきらいが、ニッポン社会には強い。「知る権利」を押し広げるスピードは、まるでカタツムリのようだ。



▼さて、公文書隠しの実害編を続けよう。

公文書を焼いて、隠したおかげで、どえらいこともしでかすことができた。「東京裁判」である。とにかく文書=証拠が消えたわけで、〈日本側は尋問などに積極的に協力することで、判の方向づけにかなりの影響力を及ぼすことができたのです〉(36頁)

▼また、〈日本近現代政治史研究者の世界では、

公文書には重要資料はろくに残っていない。遺族の元をまわって私文書を収集する方が重要

という認識が「常識」ですらあった〉という。(37頁)

たとえば、わが日本では〈海軍の最高機密文書が一財団法人の手によって保管されていた〉(35頁)ことをご存知だろうか。ちなみにこの文書は海軍の最高統帥命令である「大海令」だ。

▼〈(敗戦までの)官僚たちは、「天皇の官吏」であり、国民に対する説明責任を負っていませんでした。〉(42頁)。

そして敗戦後もいわゆる「縦割り行政」の仕組みは残り、

法は変われど、行政法は変わらず

と相成った(50頁)。さらに後年、行政管理庁が進めた文書の廃棄によって

〈「戦前の方がまだ公文書は残っている。戦後の方が残り方は酷い

という話を色々なところで耳にします〉(55頁)などという事態が進んだ。国立公文書館は独立行政法人と化した。つまり国の機関ですらなくなった(80頁)。

▼『国家と秘密』には、公文書隠しにまつわる有名な事件も続々と紹介されている。

1995年。高速増殖炉「もんじゅ」がナトリウム漏れで燃えた時、〈動力炉・核燃料開発事業団が事故直後の映像を編集して公開し、事故を小さく見せようとしたことが発覚。〉(73頁)

1996年。〈薬害エイズ問題に関する重要な資料が「発見」され、菅直人厚相がそれを公開して謝罪する事件がありました。〉(同頁)

同じころ、「住専=住宅金融専門会社」の不良債権処理(なつかしいなあ)が大問題になっていた。〈大蔵省が過去に行った住専への検査結果を「守秘義務」を名目に隠そうとしたことも注目されました。〉(同頁)

2007年の「消えた年金問題」も、要するに〈公文書管理がずさんであったが故に〉起きた問題だった。(86頁)

C型ウイルス感染」もあった。文書管理のずさんさが、国民に実害を与える(87頁)典型例なので、少し長いが引用しておく。

〈二〇〇二年にフィブリノゲン製剤の投与によるC型肝炎ウイルス感染についての報告書を作成した際、患者名が記載されていた症例一覧表を入手していたにもかかわらず、本人へ罹患を告知しなかったことが二〇〇七年に発覚したのです。このため厚労省は、故意に事実を隠した疑いがもたれました。

この批判を受けて、厚労省は調査チームを立ち上げました。その調査の結果、放置された理由の一つとして、「倉庫内の文書の保管や管理は極めて不十分で、文書管理に組織としての問題があった」ことが挙げられました。放置された資料が保管されていた地下倉庫は、「どの書棚にどの書類がある」かが系統立てて整理されておらず、文書ファイルの背表紙に件名が記載されていない、ダンボールに入れられて文書が放置されているなど、まともな管理がなされていない状態にあったのです。この結果、重要な文書が見つけられずに放置されたのです。〉(同頁)

▼実害編、もうちょっと続く。


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2014年12月14日日曜日

衆院選の意味

要注意! 無印は「支持」と同様に扱われます。

2014年12月12日付「東京新聞」20面
最高裁判事国民審査についての意見広告


【PUBLICITY 1960】2014年12月14日(日)
■衆院選の意味■


▼「沖縄タイムス」で大変勉強になる記事を読んだ(2014年12月11日付)。憲法学者である木村草太氏のインタビューだ。(社会部・下地由美子記者、デジタル部・與那覇里子記者)

きょう14日の衆院選では、最高裁の裁判官の国民審査も合わせて行われる。きのう寝込んでしまったので、書くのが遅れてしまったのだが、木村氏の論は、この国民審査について考える参考になり、かつこの「考え方」そのものがこれからいろいろ考える際の参考にもなるので、紹介しておこう。『国家と秘密』の紹介は次号以降に持ち越しってことで。

▼木村氏の論で重要なポイントは、以下の考えだ。

〈政治が都合のいい人事をするときの最大の特徴は、きちんとしたキャリアを積んでいない人を裁判官にすることです。政権にどんな意向があっても、やはり違憲なものは違憲なんです。裁判官は法律論で動きます。政権側の通したい法律論に無理があればあるほど、裁判官として任命できる人は限られてきます。

たとえば集団的自衛権を合憲と言ってくれる裁判官を選ぼうとすると、誰がみても有名でない法学者とか、裁判官の経験が少ししかない人のように、相当不自然な形になる。そういう人選では、最高裁がねじまげた憲法解釈をしてしまうことになります。〉

そりゃそうだナ。「裁判官は法律論で動きます。政権側の通したい法律論に無理があればあるほど、裁判官として任命できる人は限られてきます」という論理が重要だ。

▼きょうの国民審査で、鬼丸かおる、木内道祥(きうち・みちよし)、池上政幸、山本庸幸(やまもと・つねゆき)、山崎敏充の五氏が審査されるわけだが、ぼくは5人とも×。それぞれのくだしてきた判決に賛成できない。

木村氏はさらに突っ込んで、こう言っている。〈審査を使いこなすために大切なのは、シンプルに最高裁の裁判に興味を持つこと。全体の傾向が嫌だからと、全員にバツをつけても問題ありません。判決に反対意見を付けた人がいても、説得できなかったという点では全体の責任なのです。〉という。

これって当たり前のことなんだが、【全体の傾向が嫌だからと、全員にバツをつけても問題ありません】とハッキリ言ってもらわないと、「え、そんなことやっちゃっていいの?」と感じたり、躊躇したりしている人も多いだろう。きょうだけでなく、これからのあれこれを考えるためにも参考になる大切なインタビューだと思う。

また、木村氏は〈不都合なことを指摘されてすぐに怒り出したり、話をそらしたりする人は信用できません。不都合でも誠実に向き合い、解決策を探せる人を探し出すしかないと思います〉とも話している。これも「あたりまえ体操」で使えそうなくらい当たり前のことだが、こうした当たり前のことが当たり前でないと感じる出来事がたくさんあるから、木村氏は丁寧に説明してくれているのだろう。

彼の指摘の射程範囲は、「一票の格差」問題にとどまらない。

▼冒頭に引用した東京新聞の意見広告もまた、国民審査だけにとどまらず、たとえば衆院選にもあてはまる。無印=棄権は「支持」と同様に扱われる。

投票に行く人は、自分の得られる利益を増やすために行く。ょうの衆院選は大切な、とても大切な選挙であるにもかかわらず、投票率は下がるだろう。もちろん、投票に行く人が誠実なわけでもなく、行かない人が不誠実なわけでもない。

非正規雇用という「階級」の人口が増えているにもかかわらず、その受け皿となる政党がないと感じる人も増えているところにニッポンの国政の深刻な問題がある。坂野潤治氏の〈「階級史観」の復権〉という短文を読んで、そう感じた。(講談社の「本」2014年12月号)

きょうの衆院選は、格差社会ってどう動くものなのか、を示すひとつの象徴となるだろう。もちろん、きょうの衆院選が意味することは、それだけではないが。


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2014年12月10日水曜日

『国家と秘密』を読む~実害編その1


この国では、
国の命令で戦地に赴いて戦死した兵士たちの情報すら、
虫食いにしか残っていないありさまなのです。

 『国家と秘密 隠される公文書』34頁
久保亨・瀬畑源著、集英社新書、2014年


【PUBLICITY 1959】2014年12月10日(水)
■『国家と秘密』~実害編その1■
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▼2014年を象徴する漢字を一文字選ぶとすれば、断然、

「秘」

でしょうナ。安倍晋三総理(岸信介の孫)や麻生太郎副総理(吉田茂の孫)の暴走が続いているから「孫」でもいいけど。孫だとあんまり迫力ないもんね。

▼きょう12月10日、特定秘密保護法が施行される。今年、国政のレベルでとんでもない暴走が続いたが、最悪の事例がこの法律の施行だった。全国紙では毎日新聞が粘り強く批判を続けている。

▼今年読んだ本からどれをオススメしようかと考えたが、とりあえず一番最近読んだ本を。前号で予告したとおり久保亨・瀬畑源の共著『国家と秘密 隠される公文書』 (集英社新書、編集者は伊藤直樹)だ。

本誌で集英社新書といえば、「水の民営化」問題で佐久間智子さんにロングインタビューした際、基本書として読み込んだ『「水」戦争の世紀』(モード・バーロウ、トニー・クラーク)である。しびれる傑作だった。

『国家と秘密』は『「水」戦争の世紀』と同じく、読んで、いったん解体して、自分の手で再構成するに値する良書だ。そうすることで、「国家と公文書と国民」にまつわる実像が浮き彫りになる。具体的には、

・国が情報を隠すことによる「実害」編
・法の網をかいくぐって隠す「カラクリ」編
・「その他」編

の3つの括りに分けてみたい。まず今号は「実害」編。


▼2014年10月に発刊された『国家と秘密』は、もちろん特定秘密保護法に対する批判に重きが置かれているわけだが、「知る権利」を考える射程距離がとても長いところに特長がある。

同法が強行採決された前後、「国民の知る権利」が云々という批判がたくさんあったわけだが、本書の劈頭(へきとう)、いきなり先入見を叩き壊される。

そもそも犯されるというに足るほどの知る権利を、戦後日本の国民は、持っていたのでしょうか?〉(13頁)

本書の前半は、この強烈な一文の証明に充てられる。いわば「公文書隠しから見た近現代日本史」、明治以降、日本という国家が様々な情報を隠したことによって、日本に住む人々がどのような実害をこうむったのかを示す実例のオンパレードである。

以下、内容の要約と該当頁数を列挙しよう。日本の「国益」とは「日本国民にとっての利益」【ではない】ことが、あらためてよくわかる。

無いも同然の経済財政文書 15頁~

〈例えば水質汚染や大気汚染による健康被害に関し、行政関係機関と一人ひとりの担当者が、どのような情報に基づきどのような政策判断をしてきたか、責任の所在はどこにあるのかということは、大部分が闇に包まれてきましたし、今もそうなのです〉(16頁)

薬害エイズ事件 16頁

水俣病 17頁

戦後外交文書の公開が遅すぎる 18頁

1931年、満州事変が勃発した時の情報隠し 19頁~

〈(1931年9月18日の)柳条湖での鉄道爆破事件が出先の日本軍(満洲駐屯の関東軍)による謀略であったことは、すでに史実として明白になっています。

日本の権益であった鉄道線路(南満洲鉄道株式会社線)を日本軍自身が爆破し、それを中国軍のしわざと偽り、その虚偽を口実に「中国を懲らしめる」軍事行動を開始したのでした。軍はそのことを秘密にしました。

しかし、爆破が日本軍の謀略ではないかという観測は、当時、外交官などからの連絡により日本政府の中にも流れていたのです。にもかかわらず、その情報は戦後にいたるまで公開されませんでした。(中略)情報がきちんと公開されていれば、日本は戦争への道に踏み込まずに済んだかもしれないのです〉(20頁)

1941年、太平洋戦争前夜の戦力比較 21頁
加藤陽子の研究(朝日新聞2013年12月3日付)に拠る

沖縄返還密約 21頁

2周遅れの情報公開
他の国と比べて
公文書館整備の遅れ(23頁)と
情報公開法制定の遅れ(25頁)がひどい。

公文書を焼く実例 31頁

そもそも太平洋戦争に負けた時、日本政府は国家にとって不利になるおそれのある公文書を焼くよう、正式に命令している。彼らは【公文書を廃棄せよと閣議決定していた】のだ。命令はじつに市町村レベルまで幅広く及んだ。今号冒頭の引用は、その一つの結果である。無惨なものだ。

一読、あまりにビックリしたので、引用されている論文の一つ「敗戦と公文書廃棄 植民地・占領期における実態」を読んで確かめてみましたよ。(加藤聖文、「史料館研究紀要」第33号、105頁、平成14年3月)。

〈公文書廃棄に関しては、一九四五年八月一四日の閣議によって機密文書の廃棄が決定され、これに基づいて各官庁では組織的かつ大規模な文書焼却が行われた。特に陸海軍では同日中に陸軍大臣の命令によって高級副官名で全陸軍部隊に対し「各部隊の保有する機秘密書類は速かに焼却」することを指令し、末端部隊に至るまで徹底した文書焼却が行われた〉(105頁)

うへー。しかも、というか、当然、というか、〈この指令は在京部隊に対しては電話、その他は電報によって伝達し、電報および原稿は焼却された。陸海軍における文書焼却については、原剛「陸海軍文書の焼却と残存」(『日本歴史』第五九八号、一九九八年三月)で紹介されているが、文書の焼却指令に関しては関係者の証言と焼却指令の写しがわずかに残存するのみであり、焼却指令の現物は確認されていないとのことである。〉(135頁)

▼憲兵隊では、なんと「防空壕の通風を利用すれば早く燃えるよ」とご丁寧なアドバイスまでしている。「防空壕等内に於て火力による自然的通風を利用し逐次投入するを早きとす」(憲電第一二〇五号)。

〈さらに、敗戦後の二〇日には、机・抽斗(ひきだし)の奥に付着したもの、焼却場の焼け残り、私物に綴じ込まれたもの、私宅にある書類・手紙類などに至るまで全てを対象とした検査によって「一片の残紙」も残さないように焼却の徹底化が図られた〉(106頁)

これじゃあ軍にとって不利な文書が残っているほうがおかしいよね。そのうえで今、歴史修正主義者たちは「公文書絶対主義」とでもいうべき建前をかざし、たとえば性奴隷の証言者をウソつきだと決めつけ、歴史の真実を歪めようとご執心なわけだ。

▼これで「実害」編の半分。長くなっちゃうので、続きは次号で。


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2014年12月3日水曜日

【PUBLICITY】1958:復刊のおしらせ

秩序を愛する人たちは、たえずくりかえされる殴りあいに嫌悪を感じていたが、しまいにはそれらに不感症になってしまった。これでもってヒトラーが権力の座についたとき、ナチスによる組織的な暴力とテロの使用への道がひらけたのである。かくてタールブルク市民が、その後のすべてを比較的平然として耐え忍んだ理由が説明されるのである。 
ウィリアム・シェリダン・アレン
『ヒトラーが町にやってきた』
西義之訳、番町書房、1973年
原題は"The Nazi Seizure of Power: The Experience of a Single German Town 1922-1945"

 
【PUBLICITY 1958】2014年12月3日(水)

■復刊のおしらせ■


▼じつはEマガジンの本誌ページが、2014年2月から11月までずっと封鎖されており、メルマガを発信できなかった。配信するために必要なひと月3000円は払い続けていたのに、だ。トホホ。運営者宛に何十回も「払ったよ」メールを出したのだが、一通の返信もなく、数日ごとにチェックしていたのだが、ある日突然開通していてビックリ。

ま、ボチボチ続けます。

で、これからもこういうことがないとは限らないので、Eマガジンで登録されている方は、「まぐまぐ!」か「メルマ!」での登録をオススメしておきます。

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▼超久しぶりの今号は、

〈今年=2014年読んで面白かった本〉を教えてください

というお願いです。今年発刊の本は勿論、懐かしい本も可。

昨年も同じ特集を呼びかけて、濱田武士『漁業と震災』(みすず書房)をはじめ何冊かのオススメ本を教えていただいたが、とにかく2月から11月まで閉鎖されちゃってたので、発信の時を逃してしまった。

▼ぼくが最近読んだ本のなかでは、

『国家と秘密 隠される公文書』
 (久保亨・瀬畑源、集英社新書)

が一押しである。くわしくは次号で。

▼この間(かん)、ニッポン社会はずいぶんといろいろなことがあった。締めくくりは、この師走のクソ忙しい時期に安倍晋三総理大臣はなにを血迷ったか衆議院を解散してしまった。

来年は、どーも嫌な感じがする。いいことが起こりそうな気がしないねえ。しかし、各種メディアを舞台にどれだけ「殴りあい」が続いても、精神的な「不感症」にならずに生きていきたいものだ。「マスメディアとつきあう方法」をめぐる考察あれこれ、興味があったらおつきあいのほどを。


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2014年5月2日金曜日

佐藤優の集団的自衛権論「今踏み込むのは絶対にダメ」

▼2014年4月22日付中日新聞に載った、佐藤優の集団的自衛権論に納得した(東京新聞は5月1日付)。もともと佐藤は集団的自衛権の行使に賛成している。しかし「今踏み込むのは絶対にダメです」と語る。なぜか。佐藤の論点は三つ。一つは「世界の中の日本」。二つは「安倍総理の内在的論理」。三つは「小松一郎内閣法制局長官」。

▼まず「世界の中の日本」。ロシアのクリミア併合である。「クリミア情勢をめぐって米ロの緊張がかつてなく高まっている。その中で、米国と密接なつながりがある日本が集団的自衛権の行使容認を表明すれば、国際社会に『日本はロシアと事を構えるのだな』と誤解されますよ」「ロシアからすれば日露戦争や旧日本軍のシベリア出兵の記憶を呼び覚ますことになり、北方領土周辺で日本漁船の拿捕(だほ)や銃撃が頻発するのは目に見えています」。言われてみれば、その通りだ。中国でも、ロシアでも、多くの人の想像を超える事態が進行している。

▼次に「安倍総理の内在的論理」。「信条を優先して国益を損ねる事態は、靖国神社参拝で懲りたと思っていたのですが…。先日の国際司法裁判所での調査捕鯨の敗訴も、日本が『国際社会の共通認識を持っていないのでは』との疑義を持たれていると読むべきです」。アメリカのオバマ大統領との共同記者会見を見ても、安倍総理はどうも自らの靖国神社参拝で国益を損ねたと思っていない可能性が高い。これは稿を改めて書く。

▼三つめの小松内閣法制局長官は、その「奇抜な言動」について。「憲法解釈をつかさどる重要な立場にいながら、野党の議員との怒鳴り合い騒動まで起こした。海外メディアの特派員も注目しているので、いずれ世界に発信されてしまいますよ」。まったくその通りだ。


▼そして「米ロが緊張し、議論を進める人にも問題がある状況下で解釈改憲に突き進むメリットが、私には分からない。意味が分からないということは不気味ですよ」と結ぶ。明快で、説得力がある。
佐藤優にしても憲法学者の小林節にしてもそうだが、「集団的自衛権の行使を認めるべし」と思っている人々のなかから異論が噴き出している現状が、どれほどの異常事態なのか、その社会の中にいると、麻痺してわからなくなるのかもしれない。

▼何年か前、「骨密度(こつみつど)」という言葉が流行ったが、上記の佐藤優のコメントを読んでいて「知恵密度(ちえみつど)」という言葉が思い浮かんだ。彼の政治・外交問題をめぐるコメントは、常に「知恵密度」が濃い。

佐藤優と與那覇潤(『中国化する日本』)との対談本を企画すれば、間違いなく面白いものになるだろう。もう誰かやってるかもね。