――――――――――――――――――――――――――――
目を閉じて、じっと我慢。怒ったら、怒鳴ったら、終わり。
それは祈りに近い。憎むは人の業にあらず、裁きは神の領域。
-そう教えてくれたのはアラブの兄弟たちだった。
後藤健二 @kenjigotoip
2010年9月7日 22:49
――――――――――――――――――――――――――――
【PUBLICITY 1963】2015年2月8日(日)
■追悼 後藤健二さん・湯川遥菜さん■
▼後藤健二さんも、湯川遥菜さんに続いて殺されてしまった。その事実がわかったのは先週の日曜早朝だった。ぼくはタラル・アサドの『自爆テロ』(青土社)を読みながら机で寝てしまい、午前4時ごろ布団にもぐった。朝、テレビをつけるとだいたい後藤さん殺害のニュース一色だった。
同じ日曜の早朝に、追悼の文章を発信したい。
――――――――――――――――――――――――――――
「後藤さん殺害」映像、「イスラム国」が公開
首相「テロ許さない」
朝日新聞デジタル 2015年2月2日05時00分
過激派組織「イスラム国」は1日早朝、フリージャーナリスト後藤健二さん(47)=東京都港区=を殺害したとする映像をインターネット上に公開した。日本政府は、後藤さんの可能性が高いと判断している。会社経営者湯川遥菜(はるな)さん(42)=千葉市=を殺害したとする画像もすでに公開されており、日本人2人が拘束された人質事件は最悪の事態となった。安倍晋三首相は同日、記者団に「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わせるために、国際社会と連携していく」と語った。
1日早朝に公開された新たな映像では、後藤さんとみられる男性がひざまずかされ、横にナイフを持った黒ずくめの男が立つ。男は英語で「安倍(首相)よ。このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる」などと話し、男性の首にナイフをつきつける場面の後、遺体とみられる静止画が映し出される。「イスラム国」の宣伝を担うラジオ局も、後藤さんを殺害したと明らかにした。(中略)
「イスラム国」は1月20日、2人を人質とする映像を公開した。当初は72時間以内に身代金2億ドル(約236億円)を払わなければ殺害すると警告。24日には、湯川さんとみられる遺体の写真を持つ後藤さんの映像を公開し、後藤さんを解放する条件として、ヨルダン政府が収監する死刑囚の釈放を要求していた。
さらに29日には、後藤さんと死刑囚を交換する用意ができなければ、「イスラム国」が拘束するヨルダン軍パイロットを殺害するとのメッセージを公開。パイロットの安否は明らかになっていない。(星野典久、アンマン=渡辺丘)
■映像で流されたメッセージ(原文英語)
日本政府よ。邪悪な有志連合を構成する愚かな同盟諸国のように、お前たちはまだ、我々がアラーの加護により、権威と力を持ったカリフ国家であることを理解していない。軍すべてがお前たちの血に飢えている。
安倍(首相)よ、勝ち目のない戦争に参加するという無謀な決断によって、このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる。日本にとっての悪夢を始めよう。
――――――――――――――――――――――――――――
▼さらに2日後、次のニュースが報じられた。
――――――――――――――――――――――――――――
ヨルダン軍パイロット殺害か 「イスラム国」が映像公開
アンマン=渡辺丘、渡辺淳基
朝日新聞 2015年2月4日04時57分
過激派組織「イスラム国」が3日、昨年12月に拘束したヨルダン軍パイロット、ムアーズ・カサースベ中尉を殺害したとする画像をネット上で公開した。ヨルダン軍は同日、国営テレビを通じて「画像は本物」としたうえで、「懲罰と報復を誓う」との声明を出した。
映像では、中尉が屋外に設置されたおりの中で、火をかけられた。国営テレビは「カサースベ中尉が殺害されたのは1月3日」と伝えた。
カサースベ中尉は米軍主導の対「イスラム国」軍事行動に参加して昨年12月24日、ヨルダン空軍のF16戦闘機でシリア領空を飛行中に「イスラム国」側によるとみられるミサイル攻撃を受けて墜落。「イスラム国」に身柄を拘束された。
ヨルダン政府は当初、2005年に起きたテロ事件の実行犯として死刑判決を受けたサジダ・リシャウィ死刑囚との交換を模索していたとみられる。
だが、「イスラム国」は今年1月20日、フリージャーナリストの後藤健二さん(47)と会社経営者の湯川遥菜さん(42)の拘束を公表。のちに後藤さんとリシャウィ死刑囚の交換を求め、できない場合は中尉を殺害するとしていた。ヨルダン政府は繰り返し、中尉の生存を証明するよう「イスラム国」側に求めたが、反応はないままだった。
1月3日に殺害されたのが事実とすれば、日本政府やヨルダン政府が対応を急いでいたとき、すでに中尉は死亡していたことになる。訪米中のアブドラ国王は日程を切り上げ、帰国するという。
また、衛星テレビ局アルアラビアなどによると、ヨルダン当局は4日にも、リシャウィ死刑囚を処刑するという。(アンマン=渡辺丘、渡辺淳基)
――――――――――――――――――――――――――――
▼殺されたのは1月8日だという説もあるが、
どちらでも結論は一緒だ。「イスラーム国」は端(はな)から「交渉」する意思など1ミリも持っていなかったことがよくわかる。
「イスラーム国」関連のニュースについて、本誌の4896人の読者の皆さんに考えてほしいことがある。「イスラーム国」の目的は「恐怖を与える」ことだ。だからぼくは、今後「彼らの編集した映像」は見ない/見せないでほしいと思う。メディア関係で働いている人には、「彼らの映像を想起させる映像」もなるべく報道しないでほしいと望む。
上に引用したような新聞記事などの文字情報を読めば、彼らの主張の内容はわかる。ナチス・ドイツにも比すべき相手の土俵に、わざわざこちらから乗る必要はない。深掘りすべき点は、他にいくらでもある。ぼくはそう思う。
ただし、「イスラーム国」と戦う、ということと、「イスラーム国」が生まれた原因を考える、ということとは別の話だ。だから本誌では、「イスラーム国」が生まれた大きな原因の一つが欧米の傲慢にあることも、書く必要があれば書くだろう。「イスラーム国」の存在に、いわゆる「先進国」は責任がない、などという知的態度のもとから生まれる議論が、これから「イスラーム国」に渡るかもしれない人の心まで届く言葉になるとは、とても思えないからだ。
このテーマについて書く時、本誌では少なくとも三つのことを念頭に置いておきたい。
一つは、いまニッポンに住んでいるムスリムへの暴力やヘイトスピーチを止めること(すでに複数の事件が報道されている)。
二つは、「イスラーム国」へのニッポン人の流入を止めること(これもすでに複数の例が報道されている)。
三つは、マスメディアとのつきあい方を吟味する。これは従来どおり。いっそう重要になることは言わずもがなだろう。
この三つの観点で、共有すべき情報があったら教えてください。
▼後藤健二さんは何故(なぜ)、危険を承知でシリアへ向かったのか。その一点が解(げ)せなかったのだが、「クリスチャントゥデイ」というサイトの記事を読んで納得した。
――――――――――――――――――――――――――――
イスラム国邦人殺害予告:教会で2人の無事祈る
牧師「平和求める願いは皆同じ」
2015年1月22日19時42分 記者:竹村恭一
イスラム教過激派組織「イスラム国」に拘束されている邦人2人のうちの1人、国際ジャーナリストの後藤健二さんが所属する日本基督教団田園調布教会(東京都大田区)では21日、定例の祈祷会が行われ、拘束されている後藤さんと湯川遥菜(はるな)さんのために祈りがささげられた。
――――――――――――――――――――――――――――
▼同サイトは昨年9月、後藤さんにインタビューしていた。彼は1990年代の初めにプロテスタントのキリスト教徒になったという。だから冒頭に引用したツイートのなかにある「アラブの兄弟」は、「同じ神を信じる兄弟」という意味だ。以下、インタビューを抜粋。
――――――――――――――――――――――――――――
すでに、国際ジャーナリストとして駆け出していた彼は、常に「死」と隣り合わせにいた。そのことを不安や恐怖に思わなかったわけではない。紛争地に出向くときは、ほとんど一人で飛行機に乗り、現地で通訳やドライバーなどとチームを組む。しかし、日本から一人で危険地帯に出向き、そこで死を迎えるようなことがあれば・・・。
「もし、取材先で命を落とすようなことがあったとき、誰にも看取られないで死ぬのは寂しいかなとも思いました。天国で父なる主イエス様が迎えてくださるのであれば、寂しくないかな・・・なんて、少々後ろ向きな考えで受洗を決意したのは事実です」と後藤さん。
しかし、当時の牧師に「われわれの信じる神様は、われわれが死ぬときのためにいらっしゃるのではないのですよ」と咎められ、はっとした。それからは、毎日生きていることに感謝し、神様に守られ、今も生きていることに感謝しているという。(中略)
最後に後藤氏は、小さな聖書を差し出してくれた。いつも取材に出かけるときに手放さず持っている聖書だという。十数年前に同教会の牧師から頂いたものだと言い、大切そうにページをめくっていた。そこには、
「神は私を助けてくださる」(詩篇54:6)
という言葉が。「この言葉を、いつも心に刻み込んで、私は仕事をしています。多くの悲惨な現場、命の危険をも脅かす現場もありますが、必ず、どんな方法かはわかりませんが、神様は私を助けてくださるのだと思います」
――――――――――――――――――――――――――――
▼もう一つ、後藤さんの人間性に触れた記事を紹介しておきたい。日経1面のコラムだ。
――――――――――――――――――――――――――――
春秋2015/1/25付
「きょうはプレゼントを持ってきました」。差し出されたのはイスラム教徒が祈りのときに用いる数珠だった。場所は東京拘置所の面会室。海賊行為を働き日本で有罪判決を受けたソマリア人の男が向こう側に、こちら側には後藤健二さんがいた。2年前の2月である。
▼当時、はるか遠く、アフリカの東の海であった犯罪を日本で裁くにいたる経緯が話題になったのを記憶する。ソマリアは公用語のソマリ語と日本語との通訳さえ見つからない遠い国だ。その裁判に、後藤さんは自ら現地を取材して集めた資料を証拠として供し、孤独のなかで心を病んだソマリア人を拘置所に見舞っていた。
▼もちろん、海賊行為の悪質さ、野蛮さを憎んでいただろう。一方で、犯罪を生む国の貧困、混乱を理解し、なにより異国の獄中にあるイスラム教徒の心のうちを想像する力があった。
――――――――――――――――――――――――――――
▼この後藤さんと同じプロテスタントのキリスト教徒である佐藤優氏のコメント、特にその前半が心に沁(し)みた。
――――――――――――――――――――――――――――
佐藤優氏のコメント 産経新聞 2015.2.3 23:02
後藤健二さんはプロテスタント系のクリスチャンだった。新約聖書には、羊飼いが99匹の羊を残してでも迷える1匹の羊を探しに行く話が紹介されている。
湯川遥菜さんの行動に関してはさまざまな批判があった。でも誰も助けないのはいいのか、それは冷たすぎるのではないか。後藤さんはクリスチャンとして、勝算が限りなくゼロに近くても試してみる価値はあると考えて、「イスラム国」に向かったのだろう。
最後に覚悟を決めた表情をしたのも自分なりの信仰、信念があったからだろう。それに彼は日本人として、最後に見苦しいまねはしなかった。イスラム国に向かう直前には、「何が起こっても、責任は私自身にあります」とメッセージを残した。後藤さんの行動には武士道的な考え方も感じられる。
かつてソ連共産党が結成したコミンテルンは世界中の共産党を支部と位置づけ、全世界で共産主義革命を起こそうとしていた。イスラム国も同じだ。日本にもドイツにも、フランスにもイスラム国の支持者がいる。それが緩やかなネットワークでつながり、それぞれの国内でテロを起こさせ、世界イスラム革命を起こすことが彼らの目的となっている。
日本とイスラム国との戦争はすでに始まっており、敵は日本国内にもいる。昨年にはイスラム国の戦闘員に加わろうとシリア渡航を企てたとして、北海道大学の男子学生らが家宅捜索を受けた。こうした法規違反に関し、日本政府は厳正に対処していくべきだ。
日本国民は勝つか、消し去られるかという戦争をしている。この戦争には勝たないといけない。今回の事件にひるむことなく、中東支援を続け、イスラム国の壊滅に向けた行動を続けていくべきだろう。(談)
――――――――――――――――――――――――――――
▼後藤さんは、ジャーナリズムの原理で動いたのではなかった。ましてや政治や資本主義の原理で動いたのではなかった。彼は一人の信仰者として命をかける道を選んだ。そして同時に、ジャーナリストとして致命的なミスを犯してしまったのだ。
これだけ常軌を逸した「自己責任論」がかまびすしい社会だから、言わずもがなのことを書くけど、後藤さんを誰が責められようか。
アメリカのオバマ大統領は1月31日、後藤さんについて〈「報道を通じて、勇気を持ってシリアの人々が置かれた苦境を外部の世界に伝えようと勇敢に取り組んだ」と称賛。ヘーゲル米国防長官も同日、「後藤さんは伝えられる必要があることを伝えるため、危険な場所に行った」と評価する声明を出した〉(朝日デジタル 2015年2月2日06時48分)
いっぽうわが国の政治家は、たとえばこんな感じだ。
〈自民党の高村正彦副総裁は4日、記者団に対し、過激派組織「イスラム国」がフリージャーナリスト後藤健二さんを殺害したとされる人質事件について「後藤さんが3度にわたる日本政府の警告にもかかわらずテロリスト支配地域に入ったことは、どんなに使命感があったとしても、蛮勇というべきものであった」と語った。朝日デジタル 2015年2月4日11時48分〉
なんという落差だろう。そして、下記は2日前のぼくのツイート。
――――――――――――――――――――――――――――
マジで?信じがたい。"@minorucchu: 故・後藤健二さんの母親・石堂順子さんがドイツ最有力誌の単独インタビューに応じた。ドイツ人記者は安倍内閣が現時点まで弔意を示す連絡を母親に入れていない事実に絶句した。 "
6:28 - 2015年2月6日
――――――――――――――――――――――――――――
ドイツの週刊誌「STERN(シュテルン)」の取材だったようだ。珍しく90以上もリツイートされた。
▼これから本格的な議論が始まる安保法制について、〈菅官房長官は、邦人人質事件に関し「安全保障法制の整備と今回の事案は別問題だ」と述べた〉(共同2015年02月01日)とのこと。しかし現実的に、別モノとして扱われることはないだろうナ。さっそく安倍総理はこの機に乗じて、憲法九条を変える時期を明言したからナ。
反知性主義の特徴は「機を見るに敏」か。
▼ちなみに後藤さんは去年の9月23日のラジオで「イスラーム国」についてのインタビューに答え、以下のようにコメントしている。20分30秒くらいから。
〈日本が「アメリカの空爆を支持する」と、安倍さん(安倍総理)が、例えばこれから国連でやる演説の中で、もうそこまで具体的に言ったりなんかしたら、もう日本も、同じ同盟国と見られて、いろんなところに旅行に今、日本人の方々行ってますけれども、テロとか、誘拐とか、そういうのに気をつけなくちゃいけない。それが一つのバロメーターになると思います〉
哀しいことに、このコメントどおりの悲劇が後藤さんの身に起きてしまった。また、このラジオを聞くと彼が「イスラーム国」の目的は金でも人でもなく「土地」であることを鋭く指摘していたこともわかる。
▼あと四つの声明を紹介したい。
まず、後藤さんの妻が公表した二つの声明。一つは「イスラーム国」から脅迫されて公表したものだ。
――――――――――――――――――――――――――――
後藤さん妻、解放求める音声メッセージ公開
ヨルダンで12歳まで過ごした妻の望みとは?
Reuters 2015年01月30日
私の名前はリンコです。シリアで捕らえられたジャーナリスト、後藤健二の妻です。彼は2014年10月25日、私の元からいなくなりました。それ以来、私は彼の解放のため、舞台裏で休むことなく働き続けてきました。
私は今まで声明を出すことを避けてきました。なぜならば、健二の苦境に対するメディアの注目が世界中で騒ぎ立てられています。私は自分の子供と家族をそこから守ろうと考えていました。私たち夫婦には、2人の幼い娘がいます。私たちの娘は健二が日本を離れた時には、わずか生後3週間でした。私は、2歳の上の娘が再び父親に会えることを望んでいます。2人の娘が父親のことを知りながら、成長していくことを望んでいます。
私の夫は善良で、正直な人間です。苦しむ人びとの困窮した様子を報じるためにシリアへ向かいました。健二は、湯川遥菜さんの居場所を探し出そうとしていたと推測できます。私は遥菜さんが亡くなったことに、非常に悲しい思いをしました。そして、彼の家族の悲しみを思いました。家族の皆さんがどれだけつらい思いをされているかがわかるからです。
12月2日、健二を拘束したグループからメールを受け取ったとき、健二がトラブルの中にあることを知りました。1月20日、私は湯川遥菜さんと健二の身代金として2億ドルを要求する動画を見ました。それ以来、私とグループとの間でメールを何回かやりとりしました。私は、彼の命を救おうと戦ったのです。
20時間ほど前に、誘拐犯は私に最新の、そして最後の要求と見られる文章を送ってきました。「リンコ、お前はこのメッセージを世界のメディアに対して公表し、広げなければならない。さもなければ、健二が次だ。29日木曜日の日没までに健治と交換するサジダがトルコ国境付近にいなければ、ヨルダン人パイロットを即座に殺すつもりだ」。
これは私の夫にとって最後のチャンスであり、彼の解放と、ムサス・カサスベさんの命を救うには、あと数時間しか残されていないことを心配しています。ヨルダン政府と日本政府の手中に、二人の運命が委ねられていることを考えて欲しいと思います。
同時に、私はヨルダン政府と日本政府のすべての努力に対して感謝しています。ヨルダンと日本の人々から寄せられる同情に対しても感謝しています。私が小さかったころ、私の家族はヨルダンに住んでいました。そのため私は12歳になるまで、(ヨルダンの首都である)アンマンの学校に通っていました。だから、私にはヨルダンとヨルダンの人々に対して、特別な感情を持っており、多くの思い出があります。
最後に、私は、私と娘たちを支えてくれた、私の家族、友人たち、そして健二の同僚に感謝しています。私の夫と、ヨルダン人パイロット、ムアス・カサスベさんの無事を祈っています。リンコ
――――――――――――――――――――――――――――
▼12歳になるまで、彼女はヨルダンで暮らしていたのだ。こんな偶然があるのだろうか。
そして、夫が殺されたあとのコメント。
――――――――――――――――――――――――――――
後藤健二さん妻がコメント
「大きな喪失」「夫を誇りに思っています」
クリスチャントゥデイ 2015年2月2日15時25分
イスラム教過激派組織「イスラム国」が後藤健二さんを殺害したとする映像を公開したことを受け、後藤さんの妻は1日、英国のフリージャーナリスト支援団体「ローリー・ペック・トラスト」のウェブサイトで、英文のコメントを発表した。
健二の死の知らせに、私の家族と私は打ちのめされています。彼は、単に私の愛する夫、また私たちの可愛い子どもたちの父親であっただけでなく、世界中の多くの人々にとって、息子であり、兄弟であり、また友でした。
個人的に大きな喪失を感じていますが、イラクやソマリア、シリアといった紛争地域にいる人々の苦悩を伝えてきた夫を大変誇りに思っています。一般の人々への(紛争による)影響に光を当て、とりわけ子どもたちの視点を通して、戦争の悲劇の外にいる私たちへ伝えることに情熱を注いできました。
この困難な数カ月間にわたって、私や私たちの家族を支えてきてくださった皆様に感謝します。
私たちの家族にとって非常に困難な時であることを想像してくださると思います。メディアの皆様には、私たちのプライバシーを尊重し、この喪失を受け入れる時間を私たちに与えてくださるようお願い致します。
――――――――――――――――――――――――――――
▼これらの文章を読んで、ぼくは涙をおさえられなかった。驚くべき自制心と隙のない知性、そして後藤さんへの愛情があふれている。
そして、親族名で出されたコメントと、殺害後の、後藤さんの母のコメント。
――――――――――――――――――――――――――――
日本政府及び各国政府並びに国民の皆様へ
この度は、後藤健二が世間をお騒がせすることとなり、大変申し訳ございません。
解放に向けご尽力いただきました日本政府及び各国政府、並び無事解放を願っていただきました国民の皆様に対しまして、親族一同心よりお礼申し上げます。さらに、この間ご支援を頂きました友人の皆様に心より感謝申し上げます。
10月末にシリア国境付近にて消息を絶って以来、私ども家族は無事の帰国を祈ってまいりましたが、このような結果となり痛恨の極みであり、悲しみに打ちひしがれております。
ジャーナリストという職業柄、危険な地域の取材に出かけることも多く、万一の場合の覚悟はしてきたつもりでおりましたが、大切な家族を失い、この喪失感を受け入れなければならない塗炭の苦しみの中にあります。
最後に、親族一同の願いとしましては、後藤健二の御霊の安らぎを願うとともに、幼い子供たちとともに心静かな生活を送って参りたいと思っておりますので、ご理解とご高配を賜れれば幸いです。
後藤健二 親族一同
――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――
健二は旅立ってしまいました。あまりにも無念な死を前に、言葉が見つかりません。今はただ、悲しみで涙するのみです。しかし、その悲しみが「憎悪の連鎖」となってはならないと信じます。「戦争のない社会を作りたい」「戦争と貧困から子どもたちのいのちを救いたい」との健二の遺志を私たちが引き継いでいくことを切に願っています。
――――――――――――――――――――――――――――
▼これも、とくに親族コメントの冒頭を読んで胸が苦しくなり、泣けて仕方なかった。なぜ、謝らねばならないのか。「謝らなければ攻撃される」からだ。後藤さんの遺族にそう感じさせる圧力があるからだ。「自己責任」というひどい言葉に象徴される、この極めて内向きで攻撃的な国民性を変えなければならない。しかし島国根性の負の特徴は簡単には変わらないだろう。
▼後藤健二さんと湯川遥菜さんのご冥福を祈ります。
▼本誌をEマガジンで登録されている方は、「メルマ!」か「まぐまぐ!」での登録をオススメします。
メルマ
まぐまぐ
竹山綴労
(読者登録数)
・Eマガジン 4681部
・まぐまぐ 116部
・メルマ! 76部
・AMDS 22部