【編集方針】

 
「本が焼かれたら、灰を集めて内容を読みとらねばならない」(ジョージ・スタイナー「人間をまもる読書」)
 
「重要なのは、価値への反応と、価値を創造する能力と、価値を擁護する情熱とである。冷笑的傍観主義はよくて時間の浪費であり、悪ければ、個人と文明の双方に対して命取りともなりかねない危険な病気である」(ノーマン・カズンズ『ある編集者のオデッセイ』早川書房)
 

2015年3月14日土曜日

東京発の沖縄報道の変化


【PUBLICITY 1967】2015年3月14日(土)
■東京発の沖縄報道の変化■
freespeech21@yahoo.co.jp


▼『国家と秘密』や『イスラム国』の紹介の続きや、逢坂巌氏の『日本政治とメディア』、毎日新聞科学環境部の調査報道『偽りの薬 バルサルタン臨床試験疑惑を追う』など、「マスメディアとつきあう方法」をめぐる優れた本を一冊ずつ紹介しようと思っているわけだが、沖縄の情況が緊迫してきたので、そちらを先にメモする。

▼3月に入ってから、東京発の新聞の、沖縄に関する報道が変わりつつある。少しずつだが沖縄のニュースが――正確にいうと沖縄をめぐる日本政府やアメリカ軍の動きに関するニュースが――増えている。

▼2015年3月11日付の琉球新報1面トップに載った写真を見た人は、おそらく「マジかよ」と思ったことだろう。記事は以下のとおり。
第11管区海上保安本部・高橋次長いわく
「必要最小限の実力行使にとどめている。
過剰な実力行使をしないよう訓練も徹底している」
「もみ合いになった後は『けがはないですか』と確認しているが、
けがをした事実は確認していない」

<海保艇 男性に激突
辺野古 抗議ボート排除中 のしかかる船首
【辺野古問題取材班】米軍普天間飛行場移設に伴う新基地建設が進む名護市の大浦湾で10日、建設に抗議しようと臨時制限区域を示すように設置された浮具(フロート)を越えた男性2人の乗ったゴムボートに、後方から追走した海上保安庁の特殊警備救難艇「あるたいる」(約5トン)が衝突した。ボート後部に乗っていた男性に、「あるたいる」の船首が乗り上げた。男性に大きなけがはなかったが、左肩の痛みを訴え、「つぶされると思った」と恐怖を感じたという>


同35面には連続写真。<衝突の瞬間、周囲にいた全員が最悪の事態を予想するほどだった>


説明を追加
▼3月12日、沖縄防衛局は昨年9月から中断していた海底ボーリング調査を再開した。これを東京新聞は3月13日付1面トップで報じた。さらに2面には「琉球新報取材班」の記事が載っている。

<記者団からは(翁長雄志沖縄県)知事が繰り返す「あらゆる手法」の具体策に質問が集中。知事は「時間がたてば、そういうことなんだなと、なると思う」と次の一手をにおわせつつ、詳しくは語らなかった>

▼いっぽう、日本政府の苛立ち、焦りは同日付の産経新聞にわかりやすく現れている。<政府高官は「少なくとも海上調査を続けるだけの切り札はある。いずれ表に出す」と明かす>。さらに第11管区海上保安本部・高橋次長のロングインタビュー。<「必要最小限の実力行使にとどめている。過剰な実力行使をしないよう訓練も徹底している」(中略)「もみ合いになった後は『けがはないですか』と確認しているが、けがをした事実は確認していない」>

▼菅官房長官は以前、辺野古移設について〈前知事の承認をもって「法治国家として関係法令に基づいて既に判断がされた」との認識をしめした〉わけだが、〈移設反対の知事が誕生したという沖縄の民意をどう思っているのか〉(琉球新報2015年1月28日付社説)。

「国家」の実態も、国家を運営する手続きも、すべて「公文書」に現れる。公文書に書いてあれば縛られるし、書いていなければ縛られない。「法治国家」とは要するに「公文書」なのだ。

だから、すでに前知事から公文書で許可をとっている安倍総理大臣は、その後の県知事選挙であらためて「民意」が明らかになったにもかかわらず、その民意を公然と無視して辺野古移設を強行突破できる、沖縄人たちがガタガタぬかしても正統性はこちらにあるし、暴力も正当化される、と本気で考えているのである。

「国家とは公文書である」という法治国家の骨組みがむき出しになった状況では、もう一つの擬制である「民主主義」は、このように扱われる。この構図は、水俣病をはじめとする公害闘争に似ている。戦争時の国民と軍隊との関係にも似ている。会社や国家は、まず会社自身を、国家自身を守る存在であり、個人を守らない。

この状況を、沖縄2紙、東京新聞、朝日新聞、毎日新聞と、讀賣新聞、産経新聞、そして日経新聞がどう報じるのか/報じないのかを見比べると、国家と報道の生態学がよくわかる。

現時点で、ニッポンという国民国家の統合は危機に瀕しつつある。


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竹山綴労


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