【編集方針】

 
「本が焼かれたら、灰を集めて内容を読みとらねばならない」(ジョージ・スタイナー「人間をまもる読書」)
 
「重要なのは、価値への反応と、価値を創造する能力と、価値を擁護する情熱とである。冷笑的傍観主義はよくて時間の浪費であり、悪ければ、個人と文明の双方に対して命取りともなりかねない危険な病気である」(ノーマン・カズンズ『ある編集者のオデッセイ』早川書房)
 

2015年9月7日月曜日

欧州難民危機 過去と現在を知る

【メディア草紙】1971 2015年9月7日(月)
■欧州難民危機 過去と現在を知る■

【目次】
▼過去
▼現在

気になるので、欧州難民危機のことばかり取り上げている。

▼「シリア人を 助けてくれる 世界はどこにあるのか」ブダペスト駅で。 


https://twitter.com/anemonanyc/status/638588751757844480


▼過去

▼BBCが選んだ、欧州難民危機の写真10枚。
BBC News - 10 moving photos of Europe's migrant crisis
http://www.bbc.com/news/magazine-34137358

とくに4番目の写真を観ていただきたい。とても美しく、衝撃的な写真だ。アフリカ移民たちが、ソマリアの闇市で買ったSIMカードを使い、ジブチの海岸沿いで、とても微弱な電波をキャッチしようとしている。観たことのある人も多いと思う。なぜなら、ジョン・スタンマイヤーというアメリカのカメラマンが、今から2年も前の【2013年】に撮った写真だからデス(2014年の世界報道写真大賞)。

http://www.worldpressphoto.org/collection/photo/2014

4. Migrants passing through Djibouti, on the Gulf of Aden, sometimes save money by buying a SIM card from neighbouring Somalia on the black market. Photographer John Stanmeyer met a group of them standing on the coast waiting to catch a faint signal. "It communicated the universality of all of us," he says. "We really are standing at a crossroads of our collective humanity. Where are we going? What does it mean to be human?" The photograph won a World Press Photo award in 2014.

▼国連は欧州に移民20万人を受け入れるよう求めた。20万人とはべらぼうな数じゃねえかと思うが、9月3日にはユニセフが、【中東と北アフリカ9カ国で1370万人のこどもたちが学校教育を受けられない状態になっている】と報告している。1370人ではなく、1370万人である。具体的にはシリア、イラク、レバノン、ヨルダン、トルコ、イエメン、リビア、スーダン、パレスチナ。

http://www.unicef.or.jp/news/2015/0261.html

この報告には、2011年以降のシリアの戦のせいで、シリア難民が激増し、彼らを受け入れたヨルダン、レバノン、トルコで、すでに70万人以上のこどもが学校に通えない状況になっている、ともあった。要するに、「一つの世代」の教育が、まるごと崩壊している。

以下、国別のデータ。

【シリア】
・国内の4分の1の学校が使用不可能
・昨年だけで60校が攻撃を受けた
・これまでに5万2,000人の教師と523人のカウンセラーが職を離れた
・シリアには5年間教育を受けられていない子どもたちもいる
・少なくとも20%の子どもたちが、試験を受けるために紛争の最前線を通過しなければならなかった

【イエメン】
・4分の1の学校が使用不可能
・約60万人の子どもたちが試験を受けることができていない
・ここ数カ月の間に150万人以上の人々が自宅から避難しなければならなかった

【イラク】
・2014年はイラクにとって、2008年以来最も厳しい年であった
・700人近くの子どもたちが命を落とし、さらに500人が負傷した
・少なくとも95万人の学齢期の子どもたちが紛争の影響を受けた
・昨年、約1,200の学校が、家を失った家族のための共同避難所として使用された

【リビア】
・昨年だけで43万4,000人以上の人々が家を失った
・ベンガジ(リビア東部)では就学率が半減し、3分の1の数の学校しか機能していない

【スーダン】
・推定約290万人の人々が紛争によって家を失った
・紛争に加えて、不十分なインフラ設備や安全性の欠如、貧困家庭にとっては高すぎる生活費が子どもの学校へのアクセスに影響を与えている

▼こどもの状況を知れば、あとは推して知るべし。これだけの惨状がありながら、アランちゃんの写真一枚がSNSで爆発的に拡散する前と後とで、イギリスをはじめ欧州各国の対処は一変した。

こういう胸のつぶれるような情報を挙げていけば、しかも10年、20年の単位でさかのぼれば、キリがない。要するに、すでに、何年も前から、想像を絶する広範囲にわたって、しかも根深く、移民、難民の危機は広がり続けている。

オーストリアの冷凍トラックも、アランちゃん家族の悲劇も、ブダペスト駅も、氷山の一角でしかない。ぼくたちは、欧州難民危機の報道を通して、地理的、文化的なつながりによって、ニュースーーある一人の人間の死ーーの意味が一変する様(さま)を、目の当たりにしている。


▼現在

▼朝7時のブダペスト駅を歩く。この4分ほどの、「朝食の時間だ」というコメントで終わる、淡々とした、しかし強烈な動画一つでも、ここ数年で「メディアが激変している」ことが皮膚感覚でわかる。
Migrant crisis: Walking through Budapest's train station camp
4 September 2015 Last updated at 10:24 BST
http://www.bbc.com/news/world-europe-34149753

「編集」という文化について考える必要がある。「いい編集」が、切実に求められている。

でも、「いい編集」ってなんだろう?


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竹山綴労


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